前回のエントリーからだいぶ時間が空いてしまいましたが、イギリス・バースより無事に帰国しました。息をつく暇もなく新学期が始まり、あっという間に4月がおわってしまった感じです。入学式や新入生とのコミュニケーションなど、書きたいことはいろいろあるのですが、今回は4年生が奮闘中の就職活動について書きたいと思います。
以前のエントリーでも就職活動のことについて取り上げたことがあるのですが、わたしの勤める学部はいまの4年生が一期生という新しい学部です。彼ら・彼女らには学部の先輩たちはいませんので、他学部の学生たち以上に自分で進路を切り開いていく力が求められます(もちろん、新しい学部の一期生であることをうまく活用するという手もあります)。
このような経済状況ですので就職先を見つけるのはそう簡単なことではありませんが、私のゼミの学生たちのなかにも内定を獲得した学生がだんだんと増えてきましたし、なかには複数の企業から内定を頂くことができた学生も数名います。
一方で、かなり積極的に就職活動に取り組んでいるにもかかわらず、なかなか良い結果を得られない学生たちがいることもたしかです。そのような学生たちが受けた企業のリストを眺めているとあることに気がつきます。
それは誰もが目にしたり、耳にしたりしたことのある"有名企業"ばかりを受けているということです。このように書くといわゆる「大企業志向」のことだと思われるかもしれませんが、けっしてそうではありません。もちろん、大企業ばかりを受けている学生もなかにはいますが、企業規模だけをみると大企業ばかりではなくさまざまな規模の企業を受けている学生のほうが多いといえます。
では、ここでいう"有名企業"とはなんでしょうか。それは、学生たちがいままでの人生のなかで目にしたり、耳にしたりした経験のある企業のことといえます。わたしだってそうですが、ひとは自分が経験したことのあること/ものにはある程度自信をもって接することができますが、経験したことのないこと/ものにはなかなか触れることができません。その意味で、自分の就職先を探す際に、自分が"触れた"ことのある企業を選ぼうとすることは理解できなくはありません。
問題なのは、その学生がどのくらいの企業に"触れた"ことがあるかという、「世界の広さ」だといえるでしょう。よく考えてみれば、まだ20年ちょっとしか生きてきていない学生たちにとって、直接触れたことのある企業(ここでは「職業」に置き換えます)はごくわずかです。せいぜい、親の職業、学校の先生、警察官などの公務員、そしてお店で働く人くらいではないでしょうか。小さなこどもに「将来の夢」を聴くとだいたいこのような範囲に答えがおさまるのは、子どもたちが実際に触れることのできる職業がこのくらいだからです。
しかし、職業についての認識が、幼稚園児や小学校低学年の子どもと就職を間近に控えた大学生とのあいだで、同じレベルというわけにはいきません。この世の中にはさまざまな職業があり、数多くの企業が存在するということ、すなわち「世界の広さ」を大学生は認識しておく必要があります。
そのためのひとつの方法がアルバイトやインターンシップ(職業体験)であることは間違いありません。ただ、そのような直接的な経験だけでは、触れることのできる企業・職業に広がりが出てきません。むしろ重要なのは、企業や職業に関する知識や情報などを通じて間接的に広げていくことのできる「世界の広さ」だといえます。
新聞を読むことで、授業を受けることで、多くの企業や職業の存在について知ることができます。さらに大切なのは、あるニュースや事象の背景にさまざまな企業や職業が存在していることを"想像する力"なのです。自分が買ったことがある製品、見たことのあるお店だけが、就職活動の対象になるのではなく、製品ができるまでのプロセスやお店が成立するための条件などに考えを巡らせ、イメージを膨らませることができれば、そのすべてが就職活動の対象となり得るというわけです。
上で直接的な経験として例を挙げたアルバイトやインターンシップについても、そこでの経験が役に立つというのではなく、そこから先に多くの企業や仕事が存在していることを感じ取ることができるという点で有意義なのだといえるでしょう。
自分の人生のなかで直接触れたことのない企業や職業に対する"想像力"を広げることこそが、学生たちの就職活動にとってなによりも大切な第一歩なのではないでしょうか。
(文・石井雅章)
*親子スタイルでは「就活」をテーマにした特集ページを立ち上げました。ぜひこちらもご覧ください。

親子スタイルアドバイス
■お勧めの対象
就職活動中のお子さんをもつ親
■コメント
「○○も受けてみたら?」「△△を目指したら?」と直接アドバイスすると子どもには抵抗されがちです。テレビのニュースやCMを観て「あれってどんなふうに作ってるのかね?」とか買い物先で「この商品の陳列って誰が工夫したのかしら?」など、"その先"にある企業や職業のイメージを膨らませる会話をしてみるのも良いかもしれません。
■参考
※当サイトのコラムはスタッフ個々の私的な見解及び文責にて公開されております。
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娘の就活を見ていて、確かに企業選びはなかなか難しいと実感しました。その業界の有名企業から受けていくということになるということは確かです。他はよくわからないので受けようがないという感じに近いかもしれません。
応援する親にとっても、なかなかわからないと思います。
自分が勤めている会社の関連など以外、特に異業種だとわからないと思いますね。
規模は大きくなくてもいい仕事をしている会社ってあると思うのですが、有効な情報を多く集めることはなかなか難儀です。
石井先生が書かれたことに追加して、たとえばmixiや2CHなどの業種別トピックとかで、評判のいい企業を口コミで聞いてみるとか、そういうリサーチも大事かもしれませんね。
私が「志望業界」として就職活動を行ったのはメーカー、
中でも「食品メーカー」でしたが、どうしてこれを
希望したかというと、「何をしているかが想像できる
会社」であったからだと思います。
まさに>学生たちがいままでの人生のなかで目にしたり、耳にしたりした経験のある企業
です。自分が何をしたいか、というよりはそういう
基準で選んでいました。
本当に「世間のことを知らなかったなあ」と思います。
その後、社会人生活を進めていきながら、だんだん
自分のやりたいことがわかっていき、転職などを経て
今に至りますので、「就活」の時点で「自分の夢が
分からない」という学生さんに「仕事をしながら
見つけていってもいいんだよ」と言いたい気もしますが、
自分の子どもも含めて、若い人にはいろいろな
職業、世界のことを知って、「夢」を持てるように
してほしいなあとも思います。
(以前に書いたこの話にも通じるかな)
http://oyakostyle.com/2009/02/osg-1.html