首都圏在住の方にはピンとこないかもしれませんが、今回はローカル番組の話をさせて下さい。
在京キー局や近畿広域の準キー局でなく、いわゆる地方局で制作される番組といえば、夕方のニュースワイド番組、地域と密着した生活情報番組やスポーツ情報番組、県政・市政番組、数分間のストレートニュースや天気予報などが挙げられますが、わずかながらバラエティ番組もつくられています。若年層のテレビ離れが深刻化しているなか、ローカル・バラエティのなかには、中高生や大学生に支持を集めている番組が少なくありません。ちなみに、僕のゼミには現在、ローカル・バラエティ番組の分析を卒業論文のテーマにしている学生が在籍しています。
僕が住んでいる広島県の場合、中四国で最大の人口を擁する地域であることもあって、全国的に有名なタレントを起用したバラエティ番組が多いのが特徴です。TBS系列の中国放送(RCC)では今年の3月まで、ゴールデンタイム(木曜18:55〜19:54)に『TIM 神様の宿題』という番組が放送されていて、TIM、アンガールズ、マギー審司などが広島県内でロケをおこなっていました。この時間帯は伝統的にローカル番組の枠でしたが、『総力報道!THE NEWS』の開始と軌を一にして、番組は終了しました。ローカル枠は水曜8時台に移動し、アンガールズが司会の『じゃんが×2 スタジアム --ひろしまスポーツ応援団』というスポーツ情報番組になりました。生放送になったのは制作費削減の一環なのかもしれませんが、『神様の宿題』以前に放送されていた『西田篤史の週刊パパたいむ』という長寿番組も生放送で、たいへんな人気を集めていました。
もっとも、ゴールデンタイムのローカル・バラエティというのはあくまで異例で、ほとんどは深夜番組です。
広島県にはよしもと紙屋町劇場があるほか、『よしもと新喜劇』(毎日放送)をはじめとする近畿広域局の番組が県内でいくつも放送されており、大阪吉本に対する支持が厚いことから、吉本所属の芸人・タレントが多く出演しています。そういえば、関東に進出して苦戦した『なるトモ!』(読売テレビ)も、広島では驚くほどの高視聴率で、この番組を観てから大学に来るという学生もいました。
しかし、ローカル番組の真骨頂は何と言っても、ローカルタレントの活躍です。たとえば、中島尚樹さんというローカルタレント(ちなみに福山大学のOB)を起用した、『アグレッシブですけど、何か?』(広島ホームテレビ)という深夜番組は、広島県および、山口県、鳥取県、島根県、愛媛県といった隣接県で放送されているだけでなく、どういうわけか、熊本県、石川県、岩手県でも放送されている人気番組です(オープニング映像で、放送エリアを表した日本地図が表示されます)。「無意味なことや無価値なことにでも果敢に挑み、意味や価値を見い出すロマン追求型エンターテインメント番組」をコンセプトに、さまざまなコーナー企画に中島さんが挑戦するというもので、「アポ取り選手権 --ノーギャラで仕込める大物タレントの限界」など、低予算をネタにした企画や演出が多いのが特徴です。個人的には「ヤンキーの家に泊まろう --暴君ヤンキーに突然お泊まり交渉」という企画が好きですが。
こうしたローカル・バラエティ番組の魅力は、地域性(あるいは県民性)に対するテレビ表現のアプローチが、きわめて絶妙だということにあります。『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ)に代表される全国ネット番組では、あくまで東京を基準として、広島県の特性がステレオタイプ(紋切り)的に浮き彫りにされます。そこで紹介される"広島県"の出来事は、往々にして県民にとって、(お好み焼きやもみじ饅頭のように)あまりにもベタだったり、その反対にあまりにも特異すぎたり・・・いずれにしてもリアリティを欠いたものになりがちです。かといって、ローカルの生活情報番組のように、県民の生活に寄り添い、リアルな地域の姿を伝えようとしているわけでもありません。『アグレッシブですけど、何か?』でいえば、「ヤンキーの家に泊まろう」といった企画は、バラエティ(パロディ)の演出手法としてはオーソドックスなものですが、広島のローカルさを随所で笑いつつも、笑いの対象として消費し尽くせない残滓がつきまといます。出演者も制作者も、そして視聴者にも・・・。笑いの対象として突き放すのではなく、かといって地域性や県民性を無条件に愛するわけでもない、そういう絶妙なバランス感覚を持てるかどうかが、ローカル・バラエティの面白さの鍵です。他県からやってきたタレントがこの感覚を表現することは難しく、ローカルタレントの手腕が試される局面でしょう。
そして、このバランス感覚こそが、地方に生きる中高生や大学生が"ジモト"に対して抱いている感性と、非常に共鳴しているのではないでしょうか。
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