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飯田先生が語る「思春期のメディア、その魅惑と可能性」 飯田豊プロフィール

そろそろ大学3年生の就職活動が本格化してきました。僕が勤めている大学では、今週から学校が主催する合同企業説明会が始まり(民間企業の説明会は昨秋から始まっていますが)、早くも明暗が分かれ始めているというか、意識の持ち方や準備状況の違いが浮き彫りになってきています。

その一方、就職の意志があるものの未内定の学生にとっては、今がラストスパート。僕のゼミでもつい2日前、中国地方の広告会社に内定を決めた学生がいます。全国的には昨年度よりずっと厳しい状況ですが、僕の周囲に限っていえば、競合する大学が近隣に少ないこと、地元志向の強い学生が多いことが相まって、ドミナント戦略をとっている地元企業への就職については、さほどハードルが高くなっていない印象です。「え? 大して就活してなかったのに、もう内定したの?」という学生が激減しているのは明白で、地道な努力がいっそう重要になっていることは言うまでもありません。就職活動に対する学生の意識が急速に高まったことで、(しつこいですが、あくまで僕の周囲に限っては)今のところ、悪状況をどうにか相殺できているというのが現状でしょうか。

そんな学生たちのあいだで少し前、広く読まれていた本があります。石渡嶺司さんと大沢仁さんの共著『就活のバカヤロー --企業・大学・学生が演じる茶番劇』(光文社新書、2008年)です。なかなか評価が難しい本ですが・・・学生に対してもっとも直截的なメッセージを発していたのが、本書の帯に掲載されている2コママンガ。会社の面接で「君の強みを教えて下さい」と問われた学生が、「ハ...ハイ......」「コ...コ...コミュニケーション能力 ば、ばつぐんです...............」と答えるというもので、今の風潮を巧みに表現しています。僕自身、書店で平積みになっているのを見かけたとき、つい手にとってしまいました。

社会人として「コミュニケーション能力」が重視されることは言うまでもなく、(母国語によるコミュニケーションであれば)資格や検定によって評価される能力でもないため、"言った者勝ち"と考える学生は少なくないようですが・・・

就職活動で「コミュニケーション能力」をアピールする学生が後を絶たないのは、多くの大学に現在、アドミッション・ポリシーとして「コミュニケーション能力(の向上に学習意欲のある者)」を掲げる学部や学科が数多くあることも、背景のひとつといえるでしょう。アドミッション・ポリシーとは、大学の教育理念、目的、特色などに応じて受験生に求める能力、といった意味合いの言葉で、「入学者受け入れ方針」とも訳されるものです。僕が所属している学科も例外でなく、現在は"メディア情報文化学科"という名前ですが、学科に格上げされる前は"メディアコミュニケーションコース"と称していて、現在もコミュニケーション能力の育成を掲げています。僕が担当している講義だけでも、「情報社会とコミュニケーション」と「コミュニケーション論」の2科目がこの単語を直截的に冠しているほか、広い意味で「コミュニケーション」をテーマにしている講義はもっとたくさんあります。

就職活動という局面においては、どういう職能にどのように活かせるコミュニケーション能力なのか、その質こそが問われます。たとえば、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)では、「科学技術」「減災」「臨床」「アート」「デザイン」といったテーマが掲げられ、専門的な知識を持つ人と持たない人、あるいは利害や立場の異なる人びとをつなぎ、合意形成を達成するためのコミュニケーション手法が研究・教育されています。ここで教授を勤めている劇作家の平田オリザさんから、近い将来、医学部の学生に対して演劇ワークショップを必修化する構想を進めている、という話を聞いたことがあります。インフォームド・コンセントに対する社会的関心の高まりなどを受けて、医療者に期待されるコミュニケーション能力の水準が上がっている(変質している)ことが、そのねらいの背景にあるのでしょう。

高いコミュニケーション能力を備えた上で、いったい何が可能になるのか。志望している職種との関係において、ビジョンを具体的に示すことが肝要でしょう。むしろ、そのビジョンを説得的に示すことこそが、「コミュニケーション能力 ばつぐんです」と言えるための必要条件なのではないでしょうか。

そうだとすると、大学でメディアに関する知識や技能を専門的に学ぶことで育成される(と標榜する)「コミュニケーション能力」とはいったい何なのか、就職活動において学生が厳しく問われているのと同様、学生を募集している僕たちにも説明責任が突き付けられていると言えます。

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